「富島松五郎伝」のこと

「富島松五郎伝」のこと

12年前に浪曲界に復帰して以降現在に至るまで、「富島松五郎伝」をどう浪曲にするか、私の課題であり続けています。

岩下俊作氏原作のこの物語は過去に映画化が4度、そのうち1958年に三船敏郎が松五郎役で挑んだ「無法松の一生」はヴェネチア映画祭で最高賞を得た名作としてよく知られています。
また、1943年最初に映画化された坂東妻三郎主演の「無法松の一生」を現在でも日本映画の最高傑作と激賞する評者もいます。浪曲では、過去に村田英雄が浪曲化し、後にその一部分を歌謡曲として世に出しています。
この歌謡曲の「無法松の一生」は広く流布されて「無法松」の名称を後々まで全国的にした功績はあると私は認識していますが、果たして「浪曲」として演じられる「無法松」はどうなのか?現在迄射程の届く普遍的価値を有している「原作」や映画に拮抗する力を持っているのか?

私の浪曲「富島松五郎伝」はその問いに答えようと、いつも悪戦苦闘しています。
勿論、浪曲は映画と違って三味線奏者(浪曲では曲師といいます)を頼りに一人で約30分演じる芸能ですから制約が色々とあります。
その中で、私の最も依拠したのは当然の如く岩下俊作氏の原作の力であります。そして、優れた原作の持つ核心的テーマを「こえ・ふし」だけで表現、造形できるのが、現在でも「浪曲」という芸能ジャンルの持つ最大の価値だと私は信じているのです。

この度、多くの方のお力添えを頂いて「無法松」にとっては小倉祇園太鼓に象徴されるように、とても縁の深い八坂神社様で口演をさせて頂く機会を得ましたこと、本当に有難く厚く感謝を致しております。
また、数十年来絶版になっていた「富島松五郎伝」を八坂神社様が出版されておられたことを今回初めて知りました。
更になんと、「無法松の会」(そういう会があることもこの度初めて知りました)の初代会長は先代の宮司様であったこと、驚きでした!ここで、この八坂神社で最高の「富島松五郎伝」をやらなくて、どこでやるのか!五月一秀!!と自らを叱咤しています。
乞うご期待!